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社長コラム『砂糖の価格をどう見るか??』~第2回~

②〜大正末期〜

 

 大正12(1923)の砂糖の値段は㌔49銭。同じ年に小麦粉㌔17銭、ビール39銭、日本酒250銭程度、白米34銭であったといわれています。 

 


 

 


 

 

砂糖()


 

 

ビール()


 

 

清酒(1.8)


 

 

白米(10kg)


 

 

初任給 (大卒)


 

 

大正12(1923)


 

 

49


 

 

  39


 

 

250


 

 

34


 

 

70円〜80


 


 

 大正期といえば、明治43(1910)の日韓併合から昭和2(1927)の金融恐慌までの15年前後を指すものと考えられますが、日本が近代的な資本主義を確立し、他方、大正デモクラシーといわれる社会運動がおこる等の状況から、経済の拡大を背景に社会的中間層が発生し、戦前に於いては唯一、身近な戦争のなかった比較的穏やかな時代であったと考えられます。

 

 日露戦争後、戦勝による景気が次第に低迷し、経済的にはインフレ傾向が続くなか、国内外の行き詰まりを解決したのが、欧州で勃発した第一次大戦(1914年〜1919)であったといわれています。

 この時期、日本は大戦特需に潤い、工業生産を中心に経済規模が45倍に伸びたといわれ、その結果、好景気に支えられて大正12年には、所得、物価共に明治35年の2倍以上になっています。

 例の乱暴な比較で換算すると、砂糖1,300円程度、ビール1,040円、清酒6,660円、白米8,100円となり、日本酒を除けば明治期と大きな差ないように見えます。

 但し明治後期に比べ、経済規模の拡大と中間層の伸長により、高給のエリート層との相対的な所得格差が縮小したと思われ、実質的な物価の感覚は明治期に比べかなり下がったのではないかと考えられます。

 また日本酒は大正元年(1912)1円になって以来、10年程度で3倍近くになっていて価格の上昇が顕著ですが、これは明治末期からの米価高騰の状況を受け、原料米の不足が起因していると想像できます。

 

 資本主義の発展により都市の生活者が増加する一方、依然として封建的な地主制度の下、生産性に限界のある地方農村部との経済的格差は、この時期大きく広がったと思われ、各地で米騒動がおこっています。

 

 それは国内市場の規模を越えて膨張した産業が、大戦終結の後、欧州各国が世界市場へ復帰するとともに急激に停滞し、関東大震災の大損害を経て、深刻な金融恐慌に至る時代の社会的な不安定要素として温存され、不況と戦争の昭和初期へと続いていくことになります。

 

                                                                     その③へ続く・・・